いよいよ義歯についての話です。

 噛むという行為は実は顎の筋肉が行うものであり、筋肉が歯を色々な方向に動かしていることは前に触れました。

 ところで、この噛む筋肉、つまり力を出している咀嚼筋群の力は年齢を加えても若い時と同じ位強いものなのです。

 一方、歯や歯の周りは年齢と共に衰えていきます。

 特に中年以降、奥の臼歯群を無くし前歯だけの状態で放っておくと、前歯は噛む筋肉の力に対抗する根の構造になっていないために筋肉に負けて前に倒れ「歯が出る」状態となります。

 皮肉なことに物を噛むことに活躍する咀嚼筋が時には歯のいじめっ子になってしまうのです。

 1本でも歯を失ったら、それを補い、口の中でバランスを保つ処置を行うことが肝心です。

 そこで義歯の登場です。 咀嚼筋群に負けないしっかりした義歯、口の動きに合った義歯とはどんなものでしょう。


 歯科医の間では、

「三ない入歯」が良い義歯だと考えられています。

  物が良く噛めるようになるためには「動かない」 が特に重要です。

 義歯と残存歯とをいかにして一体化し、義歯を安定化させるかが大きな問題です。


  次のような力関係を考えなくてはなりません。

 残っている歯(歯根)を最大限利用し、義歯、特に取り外し式の義歯部分を最小限にするのが異物感少ない、より理想的な処置と考えます。

 つまり、義歯の上の人工歯は少ないほど良いということです。

 そのためには残す歯に施す前処置がとても大切です。

 しっかりした、口の動きに合った義歯。

 口で言うのは簡単ですが、技術的には非常に難しいことなのです。

 右の例は、義歯の沈下により、義歯設計の困難性を示すものです。