自分の口を大きく開け、閉じてみて下さい。どこまで口を閉じることができますか?

 歯が全部揃っている人は歯の全表面が噛み合うまで口は閉じ、安定した状態になります。でもこれは決して当たり前のことではないのです。

 歯の数が少なくなった状態ではどうでしょうか。例えば、右半分の奥歯が全てなくなった場合は、顎は右の方に傾き、顎全体がとても不安定な状態になってしまいます。これは、顎の位置が歯と筋肉のバランスの上に安定するものだからです。

 上下の歯が互いにぶつかり合って一組となり、噛む筋肉の力に対して全体で力を分散し、 個々の歯根で分担して安定しているのです。

 

 人間の歯が20本の乳歯から徐々に永久歯に変わって行くことはご存知ですね。永久歯の数は基本的には上下14本づつの28本です。人によって 異なりますが、これに親知らずが4本全部揃うと32本になります。

 永久歯のトップバッターは第一大臼歯(上下左右計4本)で、まだ 乳歯の状態の時、年齢的には6才の頃にはもう生えてくるのです。その次に前歯、小臼歯と生え変わって行きます。

 一口に歯といっても、前歯と奥歯ではその構造も役割も違います。前歯群は食べ物を噛み切るため、上下の開閉を中心とした動きをし、一方、奥の臼歯群はすりつぶすための左右の横の動きをします。

 これは人間が、肉も植物も食べる雑食動物であることの特色です。それぞれの役割に向くよう、歯根も1本から3本に分かれています。

 
 ところで、噛むという行為は歯だけで行っていると思っていませんか?

 実は歯は顎の骨に植わっている物体(刃物)に過ぎず、 『噛む』という行為は口の周りの筋肉(咀嚼筋群)のさまざまな動きの結果であり、筋肉のバランスの上に成り立っているのです。

 歯は単に、口を動かす筋肉が閉じる過程で筋肉の動く方向を規定し、噛み込んだときに筋肉の閉まろうとする力を一定の位置へと導き、押し留めている、言わば臼に対する杵のようなものです。

 この『筋肉と歯のバランスがとれていること』は、あなたの食生活のために非常に重要です。

 こうした歯の機能の違いを把握し、筋肉の複雑な動きを抑制できるような設計にすること「良い義歯を作る上のキーポイント」となる訳です。

 また、歯は虫歯や歯周病などにかかると、本来持っている役割を 果たすことができなくなって行きます。

 これは、「持主」である あなたにとっても、「歯自身」にとっても辛いことです。歯が抜けた状態をそのまま放って置くと、口の筋肉の力によって、 残った歯は過重状態となり、同じように抜ける運命をたどることに なったり、また、折角残っても本来の位置から徐々にずれて行き、 歯並びがすっかり悪くなる結果となってしまいます。